B:人喰いの半魚 ゴーゾアックベ
ゴーゾアックベっていうのは、ハヌハヌ語で「人喰いの半魚」を意味する言葉だ。そして、彼らにとっての半魚とはスワンプモンクを示す。その名が示すとおり、手配されているのは実際に人を喰った個体だ。放置すれば、新たな犠牲者が出かねない。どうにか早急に倒して、ハヌハヌ族たちを安心させてやりたいところだけど……胃袋に収まらないようにだけは、気を付けてね?
~ギルドシップの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
「それ、河童だよ!」
訪ねてきたハヌハヌ族はテーブルの向こう側からきょとんとした顔であたしの方を見る。
「いえ、ゴーゾアックベっていうのは、ハヌハヌ語で「人喰いの半魚」を意味する言葉なんです」
ハヌハヌ族はあたしの指摘をやんわり迂回して、淡々と話す。
「我々にとって半魚とはスワンプモンクの事を指します。スワンプモンクは川の傍を歩いている者を見つけるとレスリングしようと誘って…」
「だから、それ河童だよ!」
あたしがさっきより数段階大きめの声で突っ込むと、隣に座っている相方が、まぁ、まぁ、というようにあたしの肩に手を当ててあたしを宥めた。
「だって、こいつ…」
あたしが不満気に言った。
「取り敢えず最後まで聞こ」
相方は顔を覗き込むようにしながら優しく微笑んであたしの頭を撫でて言った。あたしは不満気な顔をしながら椅子に座りなおし、ハヌハヌ族に向き直ると「どうぞ」と話を続けるように促した。
「よろしいですか?これはハヌハヌに伝わるゴーゾアックベの伝承のお話なのでクレームは受け付けられません」
釘を刺されてあたしは膨れ面で頷いた。ハヌハヌ族は咳払いをして話を仕切りなおした。
「我々にとって半魚とはスワンプモンクの事を指します。スワンプモンクは川の傍を歩いている者を見つけるとレスリングしようと誘ってきます。レスリングが大好きなんです。そしてゴーゾアックベにレスリングで負けてしまうとお尻からエーテル玉を…」
「それ河童やんけ」
あたしはぎょっとした顔で相方を見た。
今度は相方が突っ込んでいる。
「とりあえず、最後まで聞こっか」
あたしがそう嗜めると相方は取り乱して言った。
「だって、お尻から玉って、河童やん?」
興奮する相方の頭を撫でながらあたしは宥めた。
「うんうん、あたしもそう思うよ。でも取り敢えず結論まで聞こっか」
あたしは尚もエキサイトする相方の肩を抑えて座らせ、自分も座り直しながらハヌハヌ族に言った。
「で、そのしりこ玉…じゃない、エーテル玉を取られると死んじゃうんでしょ?取られた人は」
「よくご存じですね。そうなんです、そうやってエーテル玉を抜き取って人を殺めたスワンプモンクをゴーゾアックベと呼ぶんです。」
ハヌハヌ族は満足げに腕を組んでウンウンと頷き後を続けた。
「ゴーゾアックベはエーテル玉を抜いた後、仕留めた人を喰らう事で多くのエーテルを吸収し力を得ます。通常のスワンプモンクより遥かに強い。」
結局全部食べるんならエーテル玉を抜くくだりは必要ないのでは?と思ったがこれ以上混乱をきたしても時間の無駄だとおもって飲み込んだ。
「じゃ、被害が出る前に退治しなきゃね」
「やって頂けますか!有難い」
ハヌハヌ族は嬉しそうな声で言った。
「ゴーゾアックベの居場所は大体わかってる?」
そういうとハヌハヌ族は凄く得意気な顔で胸を張った。
「はっきりとした居場所は分かりません。ただし、昔から伝わるおびき寄せ方があります!」
「へぇ、じゃ探し回る必要はないんだ」
あたしは感心していった。少し楽な仕事になりそうだ。
「ええ!ゴーゾアックベはヘチマが大好物なのでヘチマを川に…」
「それ、河童やんけ!」
あたし達はハモッて言った。
「ゴーゾアックベって絶対河童やん?完全に河童やん!」
「だよね?間違いないよね?絶対捕まえて証明してやる」
あたし達は妙な目的意識が生まれ、かなり異様なテンションでこの仕事に臨むことになる。